2年生編
side3 二人の連弾
「ここに座って。一緒に弾こうよ。」
アユちゃんのパパに連れられて来たお店。美味しいタルトをごちそうになって、ゆっくりジュースを飲んでいたところ、隣にいたアユ ちゃんが突然席を立ち、カウンターへと向かう。
カウンターに立っていたマスターらしきおじさまと何か話し始めた。アユちゃんのパパは何も言わずにニコニコしながらアユちゃんの行動を
眺めている。笑顔で戻ってきたアユちゃんは、私の手を取り店の奥にあるピアノの前まで私を連れていった。
あゆ 「ここに座って。一緒に弾こうよ。」
どうやら、マスターにピアノを弾いてよいか尋ねてきたようだ。
アユちゃんに肩を押されピアノの前に座る。どうしたら良いのか戸惑っていると、アユちゃんは隣に座り静かに鍵盤に手を置くと、少し大き
く息をしてから、滑らかに指を動かし始めた。きれいなメロディが流れてくる。
暫くアユちゃんが弾くのを眺めていたけれど、聞き覚えのあるその曲が気になって、アユちゃんに尋ねてみた。
美咲 「アユちゃん、それなんていう曲?」
あゆ 「知らないよ~」
美咲 「テレビで聴いた事ある気がするけど、少し感じが違うみたい。」
あゆ 「そうかもね。私もテレビでちょっと聴いただけだから。」
美咲 「えっ、そうなの?」
あゆ 「そうだよ。なんか気持いい曲だなって思って弾いてみただけだもん。
美咲ちゃんも弾いてみなよ。」
美咲 「でも、楽譜無いし弾けないよ。」
あゆ 「大丈夫。メロディは覚えたでしょ。」
(そう言ってアユはピアノを弾き続けている)
美咲 (なんて楽しそうに弾くんだろう。私なんてレッスンもそんなに好きじゃないのに)
(パパに言われてピアノ習いに行き始めたけど、自分で弾きたいと思ったことなかったな)
あゆ 「また一緒にこの曲弾こうよ。
なんか美咲ちゃんの曲って感じするんだよね~」
美咲 「そう。」
(少し照れくさい感じがした)
美咲 「じゃあ、練習してみるね。」
(暫くしてその曲がフライミートゥーザムーンというタイトルだと知った)。
シナリオ:斉尾温子
旧国立第三銀行倉吉支店を改装した白壁土蔵群の一角にある喫茶店。明治41年に建てられたものだが内装も外装も当時のまま残っているのは珍しい。落ち着い た雰囲気の中で絶品のフレンチや季節のスイーツが楽しめる。店内ではライブやコンサートも頻繁に開かれている。
ご協力:レストラン&カフェ 白壁倶楽部 http://shirakabeclub.jp/
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