「ああ、気持ちいい風だなぁ……」

泊の潮風の丘に行ってみたいと言いだしたのは祐花ちゃんだった。9月に入っても、相変わらずの暑さで、少しは涼しい所に行きたいと言い出したのだ。
それなら家で遊ぶのだっていいのにと思うけど、外に出ようとするのが祐花ちゃんらしい。
誘われないと家にこもり気味になってしまう私からすれば、こうやって誘ってくれるのはとても嬉しい。
最近、学校に行くのが少し重くなっている。祐花ちゃんにえらそうな事を言って決めたのに、自分の心の弱さが嫌になる。
夏場の大きく立ち上った入道雲は見られなくなり、のんびりとした雲が空にかかる。
涼しい風が心地良い。穏やかな海の眺めが心を落ち着かせていく。

「なつみーこっちきなよ！　恐竜がいるよー」

そういえばなんで、ここって恐竜の像が立っているのかな？
まえに祐花ちゃんに聞いたら、それは地元でもタブーだって言われたけど。
私は悩んでいた事も忘れて祐花ちゃんの元へ走っていった。